『フィリピンの事典』同朋社より

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「金」

フィリピン諸島は金鉱脈および砂金鉱床が広く、砂金のない川はないとさえ言われている。

1985年現在、その産出量は33トンで世界で9位を占める。

そのうち、ベンゲット州の産出が過半を占め、ほかに、セブ島、ミンダナオ島、マスバテ島、北カマリネス州などにも古くからの産金地ある。

ベンゲット州の金鉱脈は、閃緑岩、花崗岩、安山岩などに、
マグマだまりからの貫入に伴って生じた断層や亀裂中に、充填・晶出した、含金石英脈である。

地表に近い鉱脈は酸化し、多孔質になって含金率を高めている。

砂金鉱床は北カマリネス州のパラカン川、ヌエバ・エシハ南部ペニア・ランダ地区、リサール州アンヘロ川流域、アグノ川流域、
ミンダナオ島のスリガオ地区、アグサン川流域、イボナン川流域に古い。

また、1980年代に入って北ダバオ州で金ブームが起きている。             →鉱物    (古川久雄)



私感想:

これを読んで、さもありなんと思う日本人って、いないのではないかと思う。

そんなに金が出るのなら、みんなで川に行って、金を採って、豊かになれるではないか。

しかしフィリピンの現状を見聞きする限り、そんな状況には程遠いとしか思えない。

政治経済的に、上層部の寡占が極端で、民衆が金を採取するなんて、とんでもない、ということにでもなっているのだろうか。

的場節子著『ジパングと日本』吉川弘文館は、「黄金の国ジパングとは、日本ではなくて、フィリピンであった」
という説を唱えて、物議をかもした本であるが、

この、地質学者らしき人による1985年情報を読んでも、ウソとも思えないが、どこに本当らしさというものを感じたらいいのかと、
とまどう人も多いのではないだろうか。

「ジパングはフィリピンである」説、フィリピン産金国情報の弱点は、ひょっとしたら、この、
なぜこうなっているのかについての、フィリピンの現代社会の説明がない、ことではなかろうか。