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モアブ古物事件
偽作・誤認の話へ戻る
ベルンハイム『歴史とは何ぞや』岩波文庫p179訳注より
1868年に、モアブ(パレスチナの東南にある地方)の国王メーザ(共に旧約聖書に出てくる)の金石文
(紀元前9世紀のもの)がモアブ地方で発見された。
それが非常に珍奇な史料であったため、それ以後、学者の注意がこの方面に集まってきた。
その時、エルサレムの古物商シャピラのところへ、メーザ王のものと似た古いヘブライ文字の金石文が現われ、
やがて1872年のうちには、古土器類が2千点も出てきた。
これまで学者の発掘の際、その従者となったことのある、セリムというアラビア人が発見して、
シャピラへ売ったのである。
けれども真偽の疑いが起こったので、シャピラ古物商のところで探検隊を組織し、
現場へ出かけてみると、発掘場所の箇所が一々跡付けされ、
その上になお、同じような土器類の新発見さえ付け加わった。
それで、モアブ古物は騒がしくなり、欧州の本場に送られ、諸方に分けられ、
それぞれの学者たちが親しく研究したが、
ベルリン博物館などは、ある学者の薦めによって、これをたくさん買い入れまでした。
しかし種々疑わしいと思う人々もあって、ついにカウチュとゾーチンの意見が出た。
ゾーチンは外的に発見の事情から、カウチュは内的に実物ことに文字そのものから、
それぞれ批判攻究し、その結果、
これらの土器類は現代の偽作であり、その古代文字のごときは、
セリムがメーザ王の金石文を機械的に摸したもの、と断定されたのである。