『スペイン・ポルトガルを知る事典』平凡社2001より
スペイン太平洋航路へ戻る
「ガレオン貿易」
広義には、15〜16世紀の大航海時代から19世紀にかけて、
スペインおよびポルトガル両国を中心に展開された、ガレオン船による大洋貿易を指す。
狭義には、フィリピンのマニラとメキシコのアカプルコを結ぶ大帆船貿易を指し、
今日、歴史用語として固有名詞化されて用いられるのは後者である。
マニラ・アカプルコ貿易は、スペインがフィリピンの植民地支配に着手した、1565年から1815年まで続いた。
初期には2隻以上のガレオン船が船団を組んで、毎年1回太平洋を往復したが、
諸般の事情から船数はやがて2隻に減少し、最後には1隻になった。
マニラからアカプルコへ送られた貿易品は、
おもにマニラに集貨された中国産の絹織物た陶磁器、工芸品ならびにインド産の綿織物などで、
アカプルコからの帰り荷は、
大量のメキシコ銀と、毎年メキシコ政庁からマニラ政庁へ送られた王室補助金、それに公文書、新任の官吏や聖職者、補給の兵員
などであった。
18世紀末までスペインのフィリピン経営はもっぱらガレオン貿易に依存していたが、
この貿易はまったくの中継貿易だったので、それによってフィリピン群島内に富が蓄積されることも、
またフィリピン資源の開発や生産拡大が進められることもほとんどなかった。
しかし、スペイン王室はこの定期的なガレオン船の往来でフィリピ統治を操縦していたのであるから、
この貿易は、フィリピン経営の命綱だったのである。(池端雪浦)